節約のために集めた「お得情報」で、買い物が増えていく
「少しでも安く買いたい」と思って、セール情報を調べる。ポイント還元率を比較する。クーポンを探す。
どれも、お金を貯めたい人にとって自然な行動で、定価で買うより安く済めば、その分だけ手元に残る、そう考えるのは不思議ではありません。
ところが、お得な情報を集めることに熱心になるほど、買い物の機会が増えていくことがあります。
ポイントが多く付く日を待っていたら、予定していなかった商品まで買っていた。
送料無料になる金額を目指して、もう一品カートに加えた。
割引率が高いのを見て、「今買わないと損かもしれない」と感じた。
安く買うための工夫が、いつの間にか買う理由になっている。
ここには、節約を考えるときに見落としやすい面があります。
「安く買えた」と「お金が残った」は同じではない
例えば、1,000円の商品が20%引きになっていたとします。
200円安く買えたので、節約できたと感じるでしょう。
実際、もともと買う予定だった商品なら、支出を抑えられたことになります。
しかし、買う予定がなかった商品だったとするならば、800円で買えたとしても、使ったお金は800円です。
買わなければ1,000円も800円も出ていきません。
この違いは単純ですが、大きは違いになってきます。
「20%オフ」「ポイント10倍」「期間限定」といった表示は、支払う金額を知らせるだけでなく、今買う理由も与えてくれます。
商品そのものが必要かどうかを考える前に「この条件を逃すのはもったいない」という気持ちが先に立つこともあり、お得さを比較しているつもりが、買うかどうかではなく、どの条件で買うかを比較するようになる。
ここで、節約の基準が少しずれてきます。
お得情報は、買い物を始めるきっかけにもなる
以前の買い物では、必要なものができてから店へ行くという流れがあり、比較的わかりやす、いショッピングだったはずです。
洗剤が切れそうだから買う。靴が傷んだから探す。冷蔵庫の食材が足りないから補充する。
もちろん、以前も広告やセールはありましたが、現在はスマートフォンを開けば、買う予定がなくても商品情報が目に入ります。
ポイントのキャンペーン、アプリの通知、タイムセール、通販サイトのおすすめ表示。
買い物を始めるきっかけが、生活上の必要だけとは限りません。
ここで起きるのは「必要なものを安く買う」という行動と、「お得なものを見つけたから買う」という行動の近さ。
どちらも本人からすれば節約のつもりかもしれませんが、実際に、通常より安く購入できる場合もあります。
ただ、前者は買う必要が先にあり、後者はお得な条件が先にあります。
この順番の違いによって、買い物の総額が変わる可能性があります。
特に、ポイントやクーポンは「使わないと損」という感覚を生みやすい仕組みで、せっかく獲得したポイントを無駄にしたくない、期限が来る前に使いたいl送料無料の条件まであと少しだから、何か追加したい。
こうした思いは、一回だけなら大きな問題にならないかもしれませんが、似たような場面が何度も続くと、節約のために確認していた情報が、支出を発生させる入口にもなります。
「得をしたい」が、買い物の目的に変わるとき
お得情報を調べること自体が悪いわけではありませんし、同じ商品を買うなら、価格を比べる意味はあります。
日用品の購入時期を調整したり、必要なサービスの料金を見直したりすることも、家計を考えるうえで役立ちます。
気になるのは、節約の手段だったものが、買い物の目的に変わるときであり、例えば、ポイントを貯めるために買い物をしたり、クーポンを使うために商品を探す、セール期間だから、今のうちに買っておく。
このとき、判断の中心にあるのは「何が必要か」よりも、「どれだけ得できるか」になっています。
すると、買わないという選択肢が見えにくくなります。
1,000円の商品を800円で買うかどうかを考えているとき、本来なら「800円を使う必要があるか」も選択肢に入るはずですが、、「200円得する」という見方に集中すると、買うことを前提に考えやすくなります。
節約は、本来なら支出を抑えるための考え方です。
けれども、お得さを追いかけることが中心になると、「支出を減らす」より「得をする機会を逃さない」ことが優先される場合があります。
この二つは似ているようで、家計に与える結果が同じとは限りません。
買い物の前にあった「必要」が、後からつくられる
もう一つ、気になるのは、買う理由が後から整えられることで、セールで見つけた服を「いつか着るから」と考える。
送料無料にするための商品を「いずれ使うから」とカートに入れる。
ポイント消化のための買い物を「どうせ必要になるものだから」と納得する。
もちろん、本当に必要なものもあるでしょうし、先に買っておくことで、後の出費を抑えられることもあります。
ただ、買い物をした後で理由を探しているのか、必要性を考えたうえで買っているのかは、少し違います。
この違いは、買った直後には分かりにくいもので、安く買えた満足感があるため、支出そのものへの意識が薄くなることもあります。
ところが、月末にカードの明細や口座残高を見たとき、「一つひとつはお得だったはずなのに、なぜかお金が残っていない」と感じることがあるでしょう?
ここで問題になるのは、個々の買い物が高かったかどうかだけではなく、お得な買い物をする機会が増えたことで、買う回数や予定外の支出も増えていなかったかという点です。
節約を「買い方」だけで考えない
お金を貯めたいとき、私たちは価格を下げる方法に目を向けやすくなります。
安い店を探す。ポイントを貯める。クーポンを使う。セールを待つ。
どれも具体的で、成果も分かりやすい方法で「通常より何円安くなった」という数字が出ると、節約できた実感も得やすいでしょう。
一方で、買わなかったことで残ったお金は、目に見えにくいもので、予定外の買い物をしなかった場合、「何円得した」と表示されることはありません。
だからこそ、節約を考えるときに「いくら安く買えたか」だけでなく、「そもそも買う予定があったか」という視点も必要になってきます。
お得な情報を見つけたとき、すぐに購入を検討するのではなく、先に必要性を考える。ポイントの期限に合わせて無理に買い物をしない。送料無料の条件を満たすためだけに商品を追加しない。
こうした判断は、派手な節約術には見えませんが、買い物の回数や支出のきっかけを増やさないという意味では、価格を下げることとは別の役割を持っています。
節約のために情報を集めることが、買い物を増やすきっかけにもなる。
この矛盾に気付くと、「お得に買えたか」という満足感と、「お金が残ったか」という結果を、少し分けて考えられるようになります。
セールの画面を見て、買うかどうかを迷ったとき。
ポイントの期限が近づいて、何か探したくなったとき。
その商品が安いかどうかだけでなく、そもそも今、自分は何を買おうとしているのか。
節約を考える場面で、そんな問いが浮かぶ余地は残しておきたいものです。
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